印刷時のアナログ絵の色味・印刷所の相性

アナログ絵描きと印刷の色味問題

こんにちは、のんびり色鉛筆で絵を描いている夕飛です。

今の時代、デジタルでイラストを描く事が普通になり、
デジタルイラストが主流な事が多いと思われます。

しかし、アナログでイラストを描く人は、
とってもたくさんいます!

私はアナログの色鉛筆イラストを使い、
絵本やイラスト集などの同人誌を作ってきました。

現在、印刷所の入稿はほどんどデジタルデータで行われるため、
そういった印刷物にアナログイラストを使いたい場合は、
うまくデジタル処理をする必要があります。
しかし、処理が甘かったり、または印刷所との相性が悪いと、
本にしても色味に対して、満足感が得られない事がたくさんありました。

今回は、そんな自分が経験し、確立した、
「アナログイラストと印刷所の相性」のお話です。
※大手じゃないので「50冊未満の少部数オンデマンド印刷」前提とします。

自分のアナログイラストを、本やグッズにしたいけど、
印刷の色味が心配、または困ってる・・・という方がいましたら、参考になれたらなぁと思います。

それから、申し訳ないですが、
印刷の基本知識はある事前提で書かせて頂いていますので、
分からない用語があれば、各自お調べくださいませm(_ _)m

 

アナログイラストの色味の再現は難しい

アナログイラストの醍醐味とも言えるものの一つに、
印刷では再現が難しい表現を使う事ができる、というものがあります。

たとえば、一番分かりやすいものだと、金色や蛍光色
印刷でもできない事はない・・・でしょうが、
基本的には印刷にすると輝きが無くなり、色もくすみます。

むかしから印刷データの主流であるCMYKデータ。
印刷を考えた事がある方なら、聞いた事があると思います。

元データがRGBの場合は、CMYKデータに変換すると、
画面上の本来の色味よりも暗くなる事が多いのですが、
これは印刷の特性上仕方のない事でした。
その代わり、CMYKデータなら、印刷にした場合の色の差異は減ります。

RGBモードのままだと、画面上では色鮮やかな場合が多いため、
印刷所でCMYKに変換され、色がくすんでがっかり・・・
という体験をした方も、もしかしたらいるのかもしれません。

なので、ほとんどの印刷所では、
CMYKデータに変換して入稿する事が前提ですが、
近年はモニター上の色味をほぼそのまま持ってこれる
RGBデータの入稿も可能な印刷所が増えてきました。
(別名ビビットカラー印刷とも)

このRGB入稿は、画面の色の鮮やかさをなるべく保持して印刷できる!
という特徴を持っています。

私は、アナログ絵描きの方の中でも、
特に原画の色味を大事にしている方には、
このRGB入稿ができる印刷所をオススメしたいです!

次の項目から、このオススメ理由を順番に語らせて頂きます。

 

アナログ絵は色の変化回数が多くて不利

RGBって、デジタル用のデータでしょ?
・・・って思っちゃう方もいるかもしれませんが、
結局アナログイラストも印刷する場合、
スキャンや写真でデータ化しなければならないので、
基本はRGBデータを扱う事になってしまいます。

ここで、アナログイラストをデータ化して
印刷するまでの色の変化タイミングを書き出してみます。


 

  1. 原画が完成!(マスターデータ)
  2. スキャンor写真撮影(RGBデータになる)
    ・スキャンによる劣化の少ないPSDデータ保存奨励
    ・JPG保存の場合、作成方法によってはさらに劣化
  3. 印刷用に色調補正をする
    (色情報が一部変化&消失)
  4. カラープロファイル変換
    (印刷所による・CMYK/sRGB/AdobeRGB等)
    ※3と4は前後することもある
  5. 印刷する
    (印刷機の補正や性能・インクの種類による影響)

 

・・・アナログイラストだと、
こんなに色が変わるタイミングがあるんです!!!
これらは印刷データ化で必ず通る道であり、
何も対策なしに劣化防ぐなんて無理ゲー。

デジタル処理の部分だけでこんなに色の変化があり、
CMYK変換すると更に色が暗くなって劣化が激しいので、
通常のCMYK入稿しかないオンデマンド印刷所は、
色味を重視するアナログ絵には向いてないかもしれないです。

なので、せめてRGB印刷に頼って、
画面上の色でできる限り印刷する事で、
これ以上の色の劣化を減らそう
って意味で、
アナログ絵にはRGB印刷を奨励したいと思いました。

・・・

実際みなさん、自分のアナログイラストを
スキャンや写真等でデジタル変換した際に、
どうしても原画と色が違って納得いかない・・・となった経験はないでしょうか?

アナログイラストは、
紙の質感、凹み、塗料などが紙に乗っている立体感があり
その要素と調和した状態を目で見て完成させていきます。

しかし、その立体感はデジタル変換した際には、
ほとんど伝わりにくい状態で失われてしまいます。
調和の一端を担っている立体感が消える事による違和感です。
せっかく描いたのに、絵の情報が減ってるんです。

そうなんです。
データ化した時点で、作品の細かい情報はそぎ落とされてるので、
どうしても雰囲気や色味の変化は免れません。
これは避け様がありません・・・

デジタルだと最初からCMYKモードで描けたり
そもそもアナログにある絵の立体感がないため、
色が劣化しても全体の調和が基本的には取れているので、気になりにくい印象があります。

 

最後は結局印刷の性能

私は性能の良いCCD方式スキャナを利用して、
色の変化はできる限り抑える努力をしています。

スキャナには2種類あって、薄型で安価なCIS方式と、
でかくて高いけど美しいスキャンが可能なCCD方式があります。

プリンターとセットの複合機や、コンビニスキャンはほぼCIS方式で、
これらのスキャンで紙の目の影や色飛びが気になって、
困った事がある方は多いのではないでしょうか。

私は困りまくったので、
奮発してCCD方式のスキャナを買い、この問題を解消しました。
消えやすい黄色等の、薄い色も拾ってくれる優れものでした。

そして、カラープロファイルや色調補正についても学び、
色が正確なモニターまで購入して画面の色調整もし・・・
しかし、それでも原画の色味と同じようにはなりません。
ほとんど同じだけど、完璧には無理だと悟りました。

そしてここまで努力して、
どんなに原画に近いデータを作れたとしても、
意図しない色味で印刷されたりして、

あああああああああ!!!!!!!!

・・・と発狂しそうになりました0(:3 )〜 _(‘、3」 ∠ )_

もしかして、もう原画の良さを印刷物で伝えるのは無理なのか・・・?
と諦めそうになりましたが、

「そういやここの印刷所、インクと印刷機を最近変えてたな・・・
 以前の印刷の方が相性良かった、
 という事は、印刷所の影響も大きいのでは?」
・・・と今更ではありますが、気付きました。

これをきっかけに、次は印刷所の比較をはじめました。
印刷所の旅はここから始まりました・・・

 

印刷所の比較・資料の取り寄せ等

比較、というほど実は利用していません(前提崩壊)

だって、なんだかんだ印刷費って高くて、
お試しでやるにもけっこう大変じゃないですか。
(自分はフルカラー前提作品ばっかだし・・・)

なので、最初に始めたのは「印刷所の資料集め」でした。
有料でも無料でも、サンプルを配布してくださる印刷所はけっこうあります。

基本的にはRGBデータ対応しているところから取り寄せました。
当時はお金が無さ過ぎたので、基本は無料の資料請求だけですが・・・
(印刷所の方ごめんなさい&ありがとうございました)

私が印刷所に求めたいものは下記の5つの要素です。

  1. RGB印刷を取り扱っている事
  2. オンデマンド印刷がある事
  3. 好きな雰囲気の用紙が使える事
    ・マットコート110kg(この厚みじゃなきゃダメ)
    ・上質紙や、ガサガサクラフト感のある紙
    ・特レーブル輝きゴールド、キュリアス系等の上品に光る紙等
  4. 正方形断裁ができる事
  5. フルカラーでも価格がリーズナブルな事

注文多くてごめんなさい。
昔の同人だったら考えられなさそうな要望。

だいたい取り寄せてみて、
使用できる用紙と作品規格、印刷品質を考え、
自分と相性良いかもしれないと感じた印刷所は、下記の印刷所さんに絞れました。
※敬称略

  • 大阪印刷株式会社:おたクラブ
  • なないろ堂
  • サンライズ(オンデマンドの方)
  • グラフィック(コミグラ)
  • スターブックス

このうち、メインで利用している

  • 大阪印刷株式会社:おたクラブ
  • なないろ堂

この2社様について、語っていこうと思います。

大阪印刷株式会社:おたクラブ

~特徴とメリット~

  • RGB入稿データのカラープロファイルは「sRGB」
  • PSD、PNGでの入稿が可能
  • 紙の種類豊富、正方形可、グッズ多くて楽しい
  • 値段がバグかと思うレベルで安い。
    割引とかいらんくらい安いけど品質はわりと良し
  • 現状はほとんど定休日がないので、納品がわりと爆速

~デメリットっぽいもの~

  • デジタルオフセット印刷は色が沈みがち(青が苦手?)
  • 一方オンデマンド印刷は青みが強い
  • 色味やインク、印刷方式等の、試行錯誤による
    仕様変更が多いので、以前作れていたものが作れなくなる可能性が高い

ここは実は初めて利用した印刷所でした。
トータルでバランスの良い印刷の「おたクラブ」さんです。

もう初利用は5年以上くらい前でしょうか・・・
入稿する際の敷居が、他の印刷所と比べて非常に低く
今でも初めて印刷所の利用を考えている方にはオススメしたりします。

初めて使った時は、今と違って
RGBオンデマンド印刷機だけで頑張っていて、
印刷の色味の調整も細かく行っていました。
実際、印刷品質もとても良く、
画面と全く一緒の色味で印刷されたので、びっくりしました。
当時のままだったらまだ積極的に利用していたかもしれません。

様子が変わったのは、2019年頃に
デジタルオフセット印刷を始めた事でした。
最初は安価でオフセット並みの印刷!?すごいな!と思いましたが、
実際利用してみると、今までのオンデマンド印刷と色が違い過ぎて、
自分の絵と相性が悪くなってしまったのを覚えています。

あくまでほんとに自分の絵では、なので、
ほとんどの利用者さんは印刷品質の良さに満足されています。

確かに、デジオフ印刷は粒子感がなく、
すんごいなめらかで綺麗な印刷だったのですが、
全体的に色が沈んで暗くなっていました。

そして紙の影響をオンデマンド以上に受けてるなぁとも思いました。
モンテルキアのようなふわっとした厚みのあるものは、
紙にインクが沈むのか、意図しない柔らかい印刷になってしまったり。
印刷の特性上仕方のない事ですが、
それでもう自分には合わないなぁと思ってしまいました。

今思うと、「オンデマンド印刷の粒子感」というもの自体が、
自分の絵と相性が良かったと思えなくもありません。
色鉛筆がそんな感じの画材ですからね。笑

実は「短納期プラン」では、
まだオンデマンド機による印刷を利用できます。
おたクラブさんのオンデマンド印刷は、
オンデマンド特有のテカりが抑えめで上品なのですきです。

しかし、最近なり行きで利用する機会があったのですが、
ちょっと別の部分で違和感がありました。
昔に比べて、色の再現が良くないなぁ、と感じたのです。

自分の色補正のヘタさもあると思うのですが、
なんというか「青みが強い」という、
白さを強調するような印刷になっていました。
原画及び入稿データでは、少し赤みのあるイラストだったので、
想定外の白さになり、なんか違うなぁ・・・と。色味の違い(めっちゃ誤差レベルだと思うけど)

ただ、これはデジタルイラストを想定するならなんとなく分かります。
白さに重点を置いた方が、おそらく綺麗に印刷されます。
そして、青色重視のイラストの方も、
オンデマンドではきれいに印刷されると思います。

以前は赤みが強いと言われていましたが、
私はそれで丁度良かったのを覚えています。
もう今の色味で利用を考えるのは難しいと思うので、
ガチで色味重視の時の利用はほどほどにしています(´・ω・`)

印刷への敷居を下げてくれた事に関しては、感謝しかありません。
グッズ類はこれからもお世話になると思います!

<おたクラブさんはこちら>

 

なないろ堂

~特徴とメリット~

  • RGB入稿データのカラープロファイルは「AdobeRGB」奨励
  • PSD、Ai、PDFデータでの入稿が可能
  • カラー再現度は最高レベル!期待を裏切りません。
  • 紙の種類は、基本的なものと
    個性的なものをバランスよくそろえていらっしゃいます。
  • 変形断裁が可能!
  • 要望対応やサポートがめちゃくちゃ丁寧です。だいすき。

~デメリットっぽいもの~

  • 印刷がちょっとテカり強め
  • AdobeRGB以外だと印刷再現が不安定
  • 早期特典等の割引がない(でも基本料金安い)

おたクラブさんと相性が悪くなって
途方に暮れてた所に出会った、新しい印刷所、
「なないろ堂」さんです。

ここは全体的に「ビビットカラー印刷」を激推しされていますが、
それに恥じないRGBカラー再現度の高さでした。

カラープロファイル「AdobeRGB」でデータを作る事さえできれば、
本当に画面と変わらないような印刷をして下さいます。
めちゃくちゃ驚きました・・・
AdobeRGBの色域の広さを存分に発揮し、
広く繊細な色表現ができていました。

初めて利用した時は、
カラープロファイルの事をすっかり忘れていて、
「sRGB」でデータ入稿をしてしまい、
ちょっと色味が違うとは思ったものの、
それでも色の鮮やかさに驚きました。

これ、ちゃんとAdobeRGBで入稿したら、
すごいんじゃ、と思いました。

AdobeRGBというカラープロファイルは、
扱えるソフトが無いと厳しいので、ある意味敷居はちょっと高そうです。
(基本的にはsRGBでデジタル画面は表示されます)
Photoshopやクリップスタジオさえあれば問題ないと思います。

私はPhotoshopを愛用しているので、そこは問題ありませんでした。
次こそはちゃんとしたデータで、と思って利用すると、
あら不思議・・・・

ほぼ画面通りの印刷で納品されました。
誇張なしで、ほんとにそうでした。

 

とりあえずこれ見てください。
←ブックカバー印刷(上質紙)
→アナログ原画

色の再現度やばくないですか???

 

ぱっと見は、もう原画とか印刷とか、
どっちでもいいじゃんってレベル(?)
ちょっと違うけど、あんまり分かんないです。

私は画面上で原画と遜色無いように調整をするので、
ほとんど原画と同じような出力ができた、
と行っても過言ではありませんでした。
(下手すりゃ原画よりきれいかもしんない、と一瞬思うほど)

この印刷を見てから、もう色重視の場合は
なないろ堂さんしかありえないと信者になりました。

弱点といえば、オンデマンド印刷特有のテカりが強い事です。
しかし、上質紙やOKミューズコットン等の、
表面がザラついた紙であれば、
多少はテカりを抑えられていい感じになりました。
(マットコートはちょっとテカり強いけどしゃあない・・・)

<なないろ堂さんはこちら>

 

他の印刷所は・・・

サンライズさんは気になってるものの、
まだ利用できてません・・・
フルカラー5色印刷とかいう
強そうな謳い文句が気になって仕方ないのですが・・・

資料請求した内容も非常に美しい印刷で、
なないろ堂さんが無かったら、
真っ先にここが移住先になっていたかもしれません。
何かポストカード等で、いつか利用していみたいと思っています。

<サンライズ(オンデマンド)はこちら>

・・・

グラフィックさんはRGB印刷は料金増しなうえに
平綴じしか対応していなかったので、候補から外してしまいました。
(料金自体はおたクラブさんに負けない安さなので、増してもいいんですが・・・)

普通のCMYK印刷で利用した事があるのですが、
CMYKで色味を落とす前提なら、すごく印刷は綺麗だと思いました。
細めの印刷がちょっとジャギってたのが気になったかな?

あとどうでもいいけどインクのにおいがちょっと苦手でした・・・
これは他の方のグラフィック印刷ご本でも同じ事思ってましたし、
においが飛ぶまで揮発させてから読みました。

RGB印刷いつか利用するのかなぁ・・・

<グラフィックはこちら>

・・・

スターブックスさんも惜しい・・・!
RGBは料金10%増しなのがちょっと痛い。

用紙もオプションも豊富ですごい印刷所なのですが、
早割がないとちょっと高いかな、と思ったのが引っかかりポイントでした。
割引があってもちょっと高いかなって思う。
その分品質は良さそうなんですけどね。
(基本的には予定組んで納期通りに作れるのだけど、急に作りたくなった時に・・・)

<スターブックスはこちら>

 

まとめ:色にこだわるアナログ描きさんはRGB印刷を重視したらいいかもね!

途中から特定の印刷所への愛の叫びになってしまいましたが、
やっぱり原画の良さをしっかり伝えられる印刷ができると、
本当に嬉しいです。

原画って、一つしかないからなぁ・・・

自分が持っている限り、または誰かに買われちゃったら、
もうその絵の魅力を存分に楽しめる手段は激減してしまうのです。

もう原画はないから、印刷で楽しむしかない、となった時に、
これってほんとは色違うんだよな・・・
本物の色って何だ・・・となるのが怖いのです。

だから私は原画販売よりも、イラスト集を作って
自分にとっても、多くの人にとっても、
ほんとのイラストの魅力を楽しんでもらいたい
と思って、
印刷を通してイラスト作品を作っています。

だから印刷の色に拘ります。
たとえ原画じゃなくても、
魅力が伝わる十分な印刷であれば、
楽しんでもらえると思っているので・・・

ゆくゆくは原画販売も気軽にできるようになりたいですが、
やっぱり印刷は原画に比べて安くできますし、
お手軽に気軽に楽しんでもらえるので、ずっと続けると思います。

アナログイラストの色味に困ってる方に
参考になったらいいなぁ!!!!

 

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